英語を話せるようになる戦略

日本人のための英語の学習方法と話し方ブログ

15.自然な英語習得法

できるだけ本番に近い環境で訓練することが効果的です

 

 

「大人も子どものように英語を覚えることができるのでは?」

これは、よくある英会話教材が宣伝文句です。それらの教材はお手軽なので人気はありますが、なぜか教材に満足したという声を直接聞いたことがありません。

「子どものように」できるのは、子どもか、子どもみたいな人だけです。そもそも、子どもでも大量に時間をかけて英語が話せるようになります。決して、幼児英語スクールや小学校の英語授業を週2~3回レベルで身につくわけではありません。それこそ、海外の幼稚園や小学校に2~3年放り込むくらいのことをしないと、効果はありません。(ちなみに、小学校卒業前までに日本に帰ってきてしまうと、英語を忘れてしまいます。そのような、英語を話せない帰国子女はたくさん知っています。)

 

 

 

結論を言うと、大人が子どものように、自然に英語を覚えることはほとんど不可能です。しかし、学習地に自然さをできるだけ残すことは、英語の習得に効果があります。私たちは、学校の授業、受験勉強、TOEICなどで「不自然な勉強」をしてきました。「不自然な勉強」というのは、「耳も口を使わない、テスト問題を解くための勉強」です。本来は補助的な位置づけのはずが、試験のためにはメインの勉強法になってしまっています。

 

 

 

試験のためではなく、英語を使うためには、「トレーニングの自然さ」が重要です。自然さとは、練習(勉強・訓練)と本番との状況の近さです。テストの模擬試験をわざわざ、本番と同じ形式で行う理由は、本番で同じように力が出せるようにするからです。ビジネスのプレゼンテーションの準備もこれと同じで、できるだけ本番に近い状況で何回も練習します。ボクシングのトレーニングもまた、次の対戦相手に近いタイプのボクサーとスパーリングを行います。英語のトレーニングも、英語を使う環境に近づけて行うことが試合に勝つカギです。

 

 

 

野球の素振りの練習でも、バットを無心で振っているだけでは打てるようにはなりません。ピッチャーが投げる球をイメージして素振りをするから、本番で投げられた球に反応することができます。日本人の英語の勉強は、一度も野球の試合をしたことがないのに、素振りや筋トレばかりさせられている野球部員の状態です。これでは何のために練習しているのかわからず、やる気もなくします。またトレーニングを続けていても、野球は上手くなりません。せいぜい、スポーツテストの成績が良くなるくらいです。

 

 

 

日本で英語を勉強していて厳しいことは、「英語を使うこと」がどういうことなのか経験する機会がほとんどないことです。私たちは学校の英語の授業で、「お勉強」として英語を学び始めます。それが受験勉強やTOEICに続いてゆきます。結果として、英語が使えないけどもテストの点だけ高い人が大量生産されています。

 

 

 

英会話の練習には音読やシャドウイングも非常に重要ですが、まず何よりも実際に話す経験を作ることです。海外に行かなくても、オンライン英会話でもなんでも良いので、まず30時間くらい「試合」をしてみることです。それだけで十分に話せるようになることはありませんが、少なくとも「英語を使って話すこと」のイメージがわかるはずです。このイメージがその後のトレーニングで非常に威力を発揮します。

 

 

 

「やはり英会話学校などで外国人と話さないといけないのか?」

と思うかもしれませんが、そうではありません。相手がいる会話トレーニングは、最初や途中の「練習試合」としては重要ですが、全て「練習試合」では上達しません。大事なのは「本番を意識して、本番に近づけて練習をする」ことです。

 

 

 

例えば、黙読するよりも音読をする方が、耳と口を使っているので「本番寄り」です。新聞や論文を音読するよりも、会話やスピーチを音読する方が「本番寄り」です。単語を目で覚えるよりも、口でつぶやく方が「本番寄り」です。会話文を一人二役演じるよりも、一人分の会話だけを読むことも「本番寄り」です。会話の練習でテキストを読むだけよりも、写真や人形に話しかける方が「本番寄り」です。スピーチをただ読むよりも、聞き手を想像して読んだ方が「本番寄り」です。

 

 

 

勉強が得意な人は、文字に頼り過ぎる傾向があります。文字を「読む」ことはできますが、「聞く」ことや「話す」ことはなかなかできるようにはなりません。文字で覚えても、文字で書かれた問題が解けるようになるだけです。なぜなら、会話中に文字を見ることはできません。文字の代わりに会話中のヒントになるのは、「音」「イメージ」「感情」などです。これらを覚えていなければ、本番で英語はでてきません。この、「音」「イメージ」「感情」は、トレーニングで五感を使うことで自然と身につきます。

 

 

 

映画やドラマにはリアリティがあります。「音」「イメージ」「感情」の全てが入って、DVDであれば日本語、英語の字幕を切り替えることもできます。また何よりも、楽しみながら勉強することができます。同じ内容を繰り返し見ることができるなら、映画やドラマはかなり有効な教材になります。(アメリカドラマのフレンズなどが英語学習者の間では人気です。)

ただし、気をつけないといけないのが、使われている表現です。映画やドラマでは、洗練された英語表現が多く使われます。それらは非ネイティブの私たちにはハードルが高いです。苦労して理解できても、それを実際に使う場面はほとんどありません。こなれば表現は、役者が言うからカッコよく通じますが、非ネイティブが使っても現実的には通じません。相手がネイティブでも、日本人からドラマのような洗練された言い回しが出てくるとは思っていません。ましてや相手が非ネイティブなら、そもそもそのような洗練された表現を知らない人がほとんどです。映画やドラマは良い教材にもなりますが、使われている表現には十分な注意が必要です。

 

 

 

 

 

 

<練習回数はやはり必要>

自然なトレーニング法というと、繰り返しの回数は必要ないと思うかもしれませんが、それは違います。自然なトレーニング法で表現を覚えたとしても、1回トレーニングしただけでは使えるようにはなりません。やはり、何回も繰り返すことで、身体に馴染んで使えるようになります。

1回だけ音読したことのある文と、10回以上音読したことのある文があるとき、本番でとっさに口から出てくるのは、間違いなく10回以上の方です。

 

 

 

 

 

 

 

【図表11】英語のまわりのネットワーク

 


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<重要なポイント>

 

  ・英語は口を使うスポーツ

  ・できるだけ本番に近づけてトレーニングする

  ・五感を使ってトレーニングする 

  ・映画やドラマの、洗練され過ぎている表現は使わない。