英語を話せるようになる戦略

日本人のための英語の学習方法と話し方ブログ

3.TOEICの良いところ悪いところ

TOEICは「読む」「聞く」ためのテストです



TOEICは、日本で大人気の英語テストです。単位に認めてもらえる大学も多く、また就職活動、転職活動ではよく聞かれます。企業の昇任、昇格、海外赴任の条件としてもよく使われています。今後もしばらくこの傾向は変わらないと思われます。つまり、日本では英語力=TOEICと認識される状態は続くと思われます。ただし、世界的にはほとんど無名で、実質的には日本人と韓国人しか受けていません。ネイティブ含めた他の外国人にTOEICのことを聞いても「TOEICって何?」という状態なので、気をつけてください。


TOEICは非常に良質なテストです。「ネイティブが作った、非ネイティブのためテスト」で、変な問題もなく、実用的なテストになっています。語彙も5000語くらいあれば900点は到達可能です。また、その語彙も若干ビジネス寄りであることが、企業から人気がある理由です。文法問題も基本的で、受験勉強のような重箱の隅をつつくような問題はほとんどありません。


合計990点満点で、リーディング495点、リスニング495点の配点となっています。大学入試センター試験(リーディング200点、リスニング50点)とは違って、かなりリスニング重視となっていることが大きなポイントです。多くの日本人が苦手とするのもまたリスニング部門です。語彙、文法、読解力などと比べて、高校卒業までにリスニングの勉強(訓練)をほとんどしてこなかったことが原因です。


また、TOEICは2時間で全200問に回答しなければなりません。このスピードはどれくらいかというと、試験慣れしていないと、ネイティブでも時間が無くなるレベルです。したがって、ほとんどの受講者は時間内に回答を終えることができません。最後の方の問題はマークシートの塗り絵状態になりますが、それも仕方がありません。その200問の中には、問題の難易度にばらつきがあります。5点~990点までの人に同じ問題が出題されるので、「中学校の中間テストの問題」と「大学入試の問題」が混在しているような構成です。これは簡単な問題まで難しく見えてしまうという厄介な点でもあります。


TOEICを勉強するメリットは、何よりも目標にしやすい事です。点数がはっきりと出るため、目標を持って勉強を続けられます。また、問題集や参考書も豊富にあり、勉強がしやすいテストです。テストも全国各地で年10回程度(一回5700円)受験でき、受けやすいことも特徴です。



<TOEICの弱点>

TOEICの一般的な話は、どんな本にもかいてありますが、TOEICの「弱点」があることはあまり書かれていません。これは知っておかないと、長い勉強時間を費やした後に、「こんなはずじゃなかった」とがっかりすることになります。TOEICの大きな弱点は下の3つがあります。


 ①TOEICで測れる点数は、英語力全体の990点/5000点くらい。

 ②TOEICはリーディングとリスニングのテストなので、ライティングとスピーキングの力はわからない。

 ③TOEICが高得点な人ほど話せない。


① TOEICの満点の990点が、最高の英語力を意味するわけではありません。世の中には満点を取った人は何千人といますが、彼らは自分の英語力を「まだまだ」だと思っています。実際に、英字新聞や本でも知らない単語はたくさんありますし、BBCやCNNのニュースも8割くらいの理解です。映画やドラマでは半分以下しか理解できないことも多々あります。本当に英語力を数値化するとしたら、TOEICを5000点満点くらいにしないと測りきれません。


② TOEICはインプット(読む、聞く)のテストです。アウトプット(書く、話す)スキルを測るテストではありません。これは良い悪いとかではなく、そういうテストです。TOEICの点数が上がれば話せるようになると思っている人が非常に多いのですが、実際にTOEICで英会話力を鍛えたという人を見たことがありません。TOEICはせいぜい、英会話力の基礎を鍛えるのに役立つくらいです。TOEICの800点や900点を取っても、読めるけれども話せない状態に変わりはありません。受験勉強をいくらやっても話せるようにならないのと全く同じです。野球に例えるなら、守備をいくら練習しても、打撃は上達しないのはあたりまえです。

そのかわり、TOEICも受験英語のように「お勉強」するだけで点数はグングン伸ばすことができます。


③「話せるようになった人」を数多く見てきた感覚的な統計値から割り出すと、TOEIC600~700点代くらいの人が一番スムーズに話すことができます。海外留学から帰って来て、対策をせずにTOEICを受けるとだいたいこのレベルです。TOEICが800点以上あると、知識が邪魔をしてなかなか話すことができなくなります。TOEICばかり勉強すると、話すためのハードルを上げることになります。もし急いでTOEICの点数を上げる必要が無ければ、まず話せるようになってから、次にTOEICを勉強した方が効率的です。大学生であれば、今すぐ話すトレーニングを始めても問題ありません。



<重要なポイント>

  ・TOEICは出題範囲、レベル、語彙数のバランスが良いテスト。

  ・TOEICの満点でも、英語力は序の口。

  ・TOEICで高得点を取っても話せるようにはならない。

  ・TOEIC中級レベル(600点)くらいが、英会話マスターに最適。