英語を話せるようになる戦略

日本人のための英語の学習方法と話し方ブログ

18.英語の最適化の幻想

努力なしで英語を使えるようにはなりません

 

英語のスピーキングやリスニングも、リーディングやライティングと同じでコツコツトレーニングする必要があるということを言ってきました。そしてそれを理解した人でも、たった一つの思い込みがあると、全てが台無しになってしまう考えがあります。



「海外に行って、英語漬けになれば英語が使えるようになるはずだ。」

この考えはネイティブ信仰の次くらいに危険です。



 ・3週間のカナダのホームステイ

 ・3ヶ月のイギリス留学

 ・1年のオーストラリアのワーホリ

 ・3年間の海外勤務経験

 ・4年間のアメリカ語学留学

 ・12年間のハワイ滞在歴

 ・30年のアメリカ在住歴

 

この中で、話せる人は何人でしょうか?正解は「ゼロ」です。上の人は実際に存在する人たちです。そして、彼らは例外ではありません。海外にいる日本人は、こんなケースばっかりといっても過言ではありません。それくらいひどい状況です。「海外にいるのになぜ?」と思いますが、英語を話していないからです。海外生活は、期間が違うだけで海外旅行と同じようなものです。片言の英語でもなんとかなってしまいます。用が足せて、困らなければそれ以上努力をすることはありません。これは日本人に限った話ではありません。アメリカには、英語を話せない移民やその子孫が山ほどいます。また、日本国内にもほとんど日本語を話せないのに生活をしている外国人がいくらでもいます。外国での生活は環境への適応が難しいのであって、言葉は適応しなくても生きてゆけます。



その中で英語が話せるようになる人の条件は一つだけ。「努力すること」です。海外で生活しているときこそ勉強のチャンスです。勉強と思わなくても、「英語を話せるようになるための何か」を続けることです。



努力する人は、3ヶ月で話せるようになります。

努力しない人は、30年でも話せるようになりません。



「努力が必要なことはわかった。英語にどっぷり浸かればいいんだ」

と思う人もいるかもしれません。これもまた、短絡的な考えです。なぜなら、どっぷり浸かっても話せるようにはならないからです。正確にはほとんどの人は、話せるようにはなりません。海外生活をしている人たちも、テレビは英語で見たりします。でも話せません。外出すれば英語が耳から入ってくることも多いはずですが、でも話せません。英語漬けになるだけで話せるようになる人は、極めて限られた人です。子どもか、若くて耳が極めて良い人だけです。



「海外に行けば英単語が自然に覚えられるはずだ」

これは嘘です。使う単語しか覚えません。また目に見える物の名前くらいしか覚えられません。物の名前以外はほとんど増えません。その代わり、実際に物を見ながら覚えるので、忘れにくいというメリットはあります。また、単語は一度でも実際の場面で使うとかなり忘れにくくなります。しかし、そのようにして覚えられる単語はほんの一握りです。意識して覚えないと、単語は増えてゆきません。



「海外に行けば発音がネイティブっぽくなるだろう」

というのも、誤解です。これは、日本に長年住んでいる外国人を見ればわかります。デイブ・スペクターやサッカーのラモスの日本語の発音はずっと変わっていません。



「子どもが英語を覚えるときは文法なんて勉強しない」

確かに子どもは文法知識なしで英語を身につけます。そのかわり、膨大なインプットとアウトプットをこなしています。ネイティブの子どもでも、英語をきちんと話せるようになるまでに10年近く要します。その中で間違えたり直されたりしながら話せるようになってゆきます。子どもでもなく、10年も時間をかけられない私たちは、文法に頼ることが近道です。



「ある日突然、英語が口からスラスラ出るようになった」

という話を聞いたことがあると思います。の経験はとても素晴らしい感覚ですが、それゆえに誤解されています。「英語のインプットとアウトプットをし続ければ、いつか頭の中で英語が最適化(自動化)されて、英語が自然に話せるようになる」というイメージを持っている人はまだまだ多いです。

この最適化の実態はこうです。誰でも最初は英語を1文ずつ苦労しながら話します。海外では同じような話題を聞かれることが多いので、「同じ文」を話す機会も多くなります。「同じ文」を何度も話せば、どんどん「同じ文」だけスラスラ口にすることができます。それらの「同じ文」が、少し違う内容の違う会話において、5文以上繋がる時がやってきます。それが「英語が話せる瞬間」と呼ばれるものです。

新しい文をその場で作っているわけではありません。以前どこかで話した内容を繰り返しているだけです。その証拠に、英語で話したことのない内容になると、ほとんど話せません。このことはシンプルであたり前なのですが、無視されている事実です。「ペラペラ話せる英語は、何度も話したことがある英語だけ」です。英語はコツコツ勉強するしかないというのは、英会話の場合も一緒です。



暗記した英文や使ったことのある英文だけでは、全てのコミュニケーションは不可能に思うかもしれません。そこは、人間の記憶のあいまいさが良い具合に機能します。最初は完全に暗記していても、時間が経つと「発酵」して、良い具合ぼんやりとしてきます。そうなると、いろいろなアレンジをすることもできるようになります。海外に行って話せるようになるまでに時間がかかる理由は、この「発酵期間」です。





<重要ポイント>

  ・海外に何年いても努力しなければ話せるようにならない。

  ・子どもじゃなければ英語の最適化はおきない。

  ・ペラペラ話せる英語は、以前に使ったことのある英語のみ。

  ・集中してトレーニングすれば3ヶ月で話せるようになる。



歌の歌詞を覚えるのに、聞き流しているだけでは覚えられません。歌詞を見たり、一緒に口ずさんだり、カラオケで練習したりします。何度も繰り返し歌って、ようやく歌詞を見ずに歌えるようになります。英語を話すことも基本的には同じです。