リスニングの音とスピード
「英語の発音を認識できること」と「速い英語を理解できること」はまったく別次元の問題です。「発音の認識」には質重視のトレーニングが必要で、「理解のスピード」には量重視のトレーニングが必要です。この2つをごちゃ混ぜにしているといつまでもリスニングは上達しません。
ごちゃ混ぜのトレーニングとして真っ先に思いつくのは、子どものようにとにかく大量の英語を浴びるという方法です。残念ながら大量の英語を聞きまくったとしてもリスニングはほとんど上達しません。試しにほかの知らない外国語でやってみるとよくわかります。
まずリスニングの大前提として聞いて理解できる内容はリーディングで読んで理解できる内容だけだということです。外国語として文字から英語の勉強を始めた人たちはそれが良いか悪いかは置いておいて、ほぼリーディングがベースになっています。
そしてリスニングとリーディングの違いは「音」があることとと「スピード」が速いことです。言いかえるとリーディングができる人がリスニングができるようになるためにはこの「音」と「スピード」に対応しなければなりません。
まず「音」への対応というのは英語の発音を認識できることです。発音を耳で認識できるかどうかがポイントです。認識できるというのはその音を説明したり区別したりすることができることです。ここではスピードは関係ありません。ものすごくゆっくり発音された英語を聞いてどのような英語が発音されたかがわかればOKです。
次に「スピード」への対応というのは英語が話されるスピードでその意味を理解できることです。ゆっくりだと理解できるけれども、速いと理解できないというのは「スピード」に対応できていない状態です。
リスニングを苦手とする人はたいてい「音」と「スピード」の両方に苦手意識があると思います。であればこそそれぞれに対して対策を打つ必要があります。
「音」へ対応するためにはコツコツと聞こえる音を増やしてゆく必要があります。発音記号を理解したり、耳から聞こえる音を文として目で確認したりという質を重視したトレーニングが必要です。
一方「スピード」へ対応するためにはある程度の量のトレーニングをこなす必要があります。「スピード」は言ってみれば脳の処理速度です。脳の処理速度を上げるためには繰り返しのトレーニングが必要です。
このようにリスニングといっても「音」と「スピード」のどちらを鍛えるかでトレーニング方法は変わってきます。それを一つにするとどちらを鍛えているか分からなくなります。下手をすると「認識できない音を理解できないスピードで」必死に聞こうとしているだけかもしれません。
怖いことに巷にある英語のリスニング教材は「認識できない音を理解できないスピード」で話されるものがほとんどです。「音」か「スピード」のどちらを鍛えるのか自分ではっきり目的意識を持っていないと、そういう教材を聞き流すだけになってしまいます。